お酒の話である。
日本には日本のお酒があり、「日本で飲む日本酒が、世界中のどの場所で飲むよりもおいしいに違いない」との思いのもと、日々日本酒か焼酎を飲んでいる。
帰国から1年間、いろいろな日本酒を飲んでみたが、案の定なかなか美味いと思える酒に出会えない。
もちろん予算に限りがあっての話である。
当然、好みは人それぞれ、その日の体調によっても、共に食する具によっても、評価なんて当てにはならない大前提がある。
さらに、冷酒で美味いもの、熱燗が美味いものもあって当然だ。
厄介なのは友人に教わったヌル燗の魔力である。
そんななか、白雪、大関、月桂冠という、日本のどこでも買えるお酒も飲んだのだが、こんなものかというのがいい線だった。
そして宝酒造の松竹梅だが、なぜか私の触手に訴えるものがあった。
冷で飲むときの辛味。熱燗では辛さが前面に来すぎるため、冷向きの酒とは思うが、例のヌル燗がたまらなくいい。
ヌル燗といっても温度の幅は大きいが、私の好みはかなりヌル目の「ほんのりあったか」である。
この酒が今までの日本酒の中で一番いい、などというつもりはない。
日常飲む分に、どこでも手軽に買えることが、やはり必要なのだ。
ヤマザキの食パンや、キッコーマンの醤油のようなものだ。
そこでこの松竹梅を、我が家の標準酒と設定した。
ハウスワインのようなものだ。
またはトイレットペーパーやシャンプーの銘柄を固定するようなものだ。
さて「松竹梅」というと、上中下に差別する言葉を思い浮かべるが、おめでたいことの3種でもある。
富士、鷹、なすびみたいなものだ。
松は美しさ、長寿、神聖さを、竹は強さ、生命力を、梅は華やかさ、繁栄をあらわすという。
宝酒造のホームページからは、松は持久力、竹は成長力、梅は生命力で、よろこびの清酒とある。
今後もいろいろな日本酒に出会うだろうが、それらの味の基準として、松竹梅を使ってゆこうと考えている。
今宵も酒が美味い。幸せなことである。
今日は上三川町の酒屋で見つけた、「初霞」というお酒です。
酒業三百年の酒蔵HPはしぶくniftyで作られています。
http://homepage3.nifty.com/nara-sake/kuramoto/kubo.html
どうやら、奈良県酒造組合が共同で作成しているようです。
小規模な酒蔵では、いろいろと工夫をしながら、時代に取り残されないよう努力している様がうかがい知れます。
このお酒、お米の甘さが程よく、冷ではほとんど香りのしない日本酒の中で、実にまろやかな香りをかもしている。
冷でよし、ヌル燗はなお良し、熱燗も基準酒「松竹梅」より全然滑らかで、むせるようなことがない。
日本酒比較を始めるきっかけとなった、1本であります。
栃木県では比較的大手の酒造会社である。
http://www.shikisakura.co.jp/
酒蔵は宇都宮駅から会社までの中間にあることについ最近気付いたが、まだ訪問してはいない。
幅広いランクのある四季桜の中で、もっとも安価なものを試してみた。
安価とはいえ、松竹梅よりはちょっと高い。
松竹梅を10とすると、この四季桜の点数は、
冷:8点
ヌル:10点
燗:6点
といったところか。
こうなるともっと高価な四季桜を試してみたくなるものである。
楽しみがまた一つ増えた。
雄東 精撰 杉田酒造
小山市の北西部、田んぼの中の小さな集落にその酒造があります。
ご覧のとおり、商売っ気のまるでないかのたたずまいの、本当に小規模な酒蔵です。
そこで造られるお酒が、雄東(ゆうとう)です。
いつものように一番安いお酒を買ってきました。昔で言う2級酒だそうです。
そのお味は?
利き酒は基準酒である松竹梅と一緒に、湯飲みに注がれます。
そしてヒヤと称される常温での飲み比べ、続いてヌル燗、そして熱燗へと進みます。
最後には燗冷ましの状態になるのですが、そこは評価外ということにしています。
さてヒヤ酒ですが、う、美味い。
麹の形が見えるような味です。ちょっと茶色がかった麹です。
そのため、麹の甘さがあります。喉を通過したあとにも、お酒の香ばしさが残ります。
これはひょっとして高得点です。
ステージはヌル燗へと移ります。
もろみの味を残すお酒ですので、加熱には不利かもしれませんが、それでもまだまろやかさは多少残っています。
しかし熱燗では辛味が増し、その特徴はわずかに残るのみとなりました。
採点結果は、
ヒヤ:14点
ヌル:11点
燗:9点
です。
このお酒は、コップ酒が良いようです。
日本酒を飲んだら、この日記を付けないと、次の日本酒を開けてはいけないルールを勝手に作っています。
ですので、さっさと書かせてもらいます。
清酒大関ですが、どうしても工場の金属パイプから流れてくる、化学合成的な味がしてなりません。
ヒヤ=1点
ヌル燗=5点
熱燗=10点
です。
熱燗に弱い松竹梅ですが、大関は熱燗にすればようやく飲めるかなという感じ。
大関ファンがいたら、ごめんなさいね。
中谷酒造 米ぎん
このお酒、高級料亭やホテルでもてなされる、崇高なお酒らしい。
小売店では全国で40店ほどしか手に入らないというが、上三川町の酒屋で売られていた。
さて、そのお味は。
個人的な勝手な判断だが、どうやら空気にしばらくさらした方が、風味も良くなってくるようだ。
つまり、1杯目は正直「ん?」という感じである。
それが料理とともに輝きを増し、だんだんと高貴なお酒へと変身する。
料亭酒ということで、どんな料理が合うのかと思ったが、意外と濃い味の料理に良く合うようだ。
鰤ダイコンより肉じゃが、刺身より鯛の煮物といったところか。
採点は、
ヒヤ=14点
ヌル燗=12点
熱燗=10点
といったところか。
とにかく上品さで勝負という感じのお酒である。
高清水 大吟醸 嘉兆
お次は頂き物であるが、嘉兆という秋田高清水のお酒。
グラスに注いだ時から、その香りと粘性が高いことがわかる。
濃い色のボトルに隠されたその色は、ほんのりと黄色がかっている。
http://www.takashimizu.co.jp/products/html/ginjoh/220400280.html
HPには、常温より冷やして飲む方が良いと書かれているが、あいにくと私のヒヤは、常温を意味する。
一口含むととたんに麹の味が広がる。
甘さと苦味の混じった、複雑な麹の味である。
先の「米ぎん」がひたすら高貴な味に対し、この「嘉兆」は、上品の中に酒本来の味を前面に押し出した、腰の強いできである。
ヒヤ(常温)でこれだけ薫り高ければ、あえてヌル燗や熱燗を試すまでもなかろうということで、評価はヒヤのみで15点の、暫定1位を与えよう。
お値段もダントツ1位ですけどね。
後日冷蔵庫で冷やしてみました。
お~、ひんやりの中でかほり高きキラキラとしたまろやかな味。
これはいけます。
結城の酒 武勇
萌え~な酒屋さんで、硬そうなお酒を買ってきました。
その名も「武勇」。
醸造元も(株)武勇とは、いさぎが良いではないですか。
http://www.buyu.jp/index.html
いつものように、一番安い酒、白ラベルを買ってきました。
糖類無添加とありますが、湯飲みの中の武勇さんは、しっかり黄色がかってほんわかさせてくれるのかと思いきや、いきなりばっさり切り落とされました。
やに男っぽい切れ。これが武勇かという見事な戦略です。
お燗をつけてみるとやや丸みを帯びてきますが、まだまだいけます。
これは点数難しいなあ。
このところ好敵手が多く、松竹梅が連敗中ですが、武勇とは違った切り口をもつ、これはこれでいけるクチだと思うのですが、何とか比較をしなくてはなりません。
えい、
ヒヤ=9点
燗=12点
ヌル燗は明日以降に持ち越しとさせてください。
ちょっとすると、上の点数も変わるかもしれません。
2~5日は楽しめますから。
ヌル燗も9点だな。
西堀酒造 門外不出 特別純米
1月の末に小山の西堀酒造にお邪魔しました。
国道4号線沿いの酒蔵は、滋賀県東近江の西堀家十代当主が明治五年に譲り受けたという、江戸時代からの歴史ある酒蔵で、その長屋門は国の有形文化財に登録されているほどです。
そのくだりの書かれた5角形の家門を記した札の上、丸いすずめ蜂の巣のようなぼんぼりを、酒林(さかばやし)といい、杉の葉を束ねて球状にし、酒蔵の軒下に吊るし、良質酒の醸出を願ったそうです。新酒が出来た時に新しい杉の葉で作った酒林と取り替え、杉の葉が徐々に茶色がかっていくのと、新酒が古酒へと熟成していく様子を窺い知ることが出来る、というのが現代の酒林だそうです。
結城市の酒屋「たまごや」にも、酒林がぶら下がっていましたが、写真には載せませんでした。
写真中央の門外不出のほか、奥座敷や若盛が、当家のお酒として名が通っています。
今回はその門外不出 特別純米を味わってみました。
ヒヤ: 先ずは基準酒松竹梅。うん、落ち着いた長く飲める酒である。次に門外不出。湯飲みを鼻に持って言っただけであま~い麹の香りがただよい、口に含むとまあるい味が広がりますが、それがきりりとした辛めの飲み口に変わります。これは美味いです。15点かも。そして確認のため、松竹梅へ戻りますが、うえ~、松竹梅が苦くて飲めません。これは不思議です。
ヌル燗: ありゃ、甘味がなくなり辛いだけのお酒になってしまった。8点
熱燗: 水のように味がなくなった。飲んだ後の辛味は残るが。純米酒はお燗をするものではないな。6点
温度による意外な展開に、非常にびっくりさせられた「室温専門酒、門外不出」でした。
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