1/01/2016

新天地シンガポール共和国

 アイントホーフェンというオランダの町への赴任を皮切りに、同じくオランダのアムステルダムで3年半暮らし、日本を1年半経験した後アメリカ国内5箇所を15年かけて点々とする生活。帰国して6年の間に3箇所の転勤を経て、初めてのアジアの赴任地がここ、シンガポールです。

 キヤノンの半導体製造装置のサービスと販売に30余年関わり、シンガポールが13箇所目の勤務地ですが、キヤノンシンガポールは南アジアを中心に18カ国のキヤノン製品統括拠点として1979年に開業しました。半導体装置事業部は2010年にキヤノンアネルバを迎え、現在はシンガポールを中心に隣国のマレーシア、タイの顧客に対して、五十名ほどの規模で営業活動とサービスを展開しています。現在の顧客とともに事業を発展させ、今後さらに活動エリアを広げてゆくよう、日々チャレンジしている若き集団です。

 「アジア南端のいいところ」というくらいの漠然とした印象しか持たずに、2015年の10月初にシンガポールのチャンギ国際空港に降り立ちましたが、これが本当にいいところです。少なくとも今のところは何の問題も無く楽しく単身生活ができています。海外を感じさせない、東京生活の延長のようなシンガポールで生活して感じたこと、気づいたこと、悩んだことなどを、お知らせしていけたらと思います。あくまで私の個人的フィルターを通しての報告になりますので、その点はご了承ください。

 シンガポールの地理

日本人としては、先ずは地理的状況を説明するべきかと思います。世界地図でカンボジアはどこですか?と聞かれても正解率は低そうな気がしますが、シンガポールは?の正解率はかなり高いのではないでしょうか。

 日本の西には中国があります。中国の海岸線を南に降りていくと、台湾を過ぎ香港に着きます。もう少しいくと中国の海南島という島があり、その先はベトナムです。タツノオトシゴのおなかのようなベトナム海岸の南端で、タイランド湾が始まり陸地はいったん北西に向かい、行き着いた先がタイのバンコクです。このあたりからマレー半島が始まり、マレー半島の南端が今回私が赴任しているシンガポールです。

 赤道の北137km北緯1度17分東経103度51分に位置し、東西50km南北26kmの菱形の本島(面積710平方km)と六十余の島からなる、高温多湿な熱帯雨林気候の国、というのが中学生でもわかるこの国の概況です。着任が10月初めだったため、東京の夏と比べると「すがすがしい」くらいのさわやかさだったのですが、隣国のスマトラ島の山火事からの煙害であるヘイズが蔓延しており、これだけは勘弁して欲しいと切に思います。ヘイズとは、微小粒子状物質いわゆるPM2.5を含む、SO2、NO2その他の有害物質を含むため、喉や目の痛みやひどい人では声が出なくなることもあります。森林火災の火元であるインドネシアのスマトラ島は、シンガポールの西に位置し、11月ごろからの雨季が到来し鎮火するまでは、逃れようがない自然災害です。野焼きによる人的災害ということも言われていますが、火山活動による地熱が高く、地中の木の根が炭火状態となり、より多くの有害物質を放出しているようです。この地熱を利用してクリーン(グリーン)エナジーの研究も最近では盛んなようです。

 シンガポールの気候

 1929年~2009年の気象データから月別の平均気温を見ると、最高気温が最も高いのは4月で31.7℃、低いのは1月の30.1℃、その差は1.6℃しかなく、最低気温も5月の24.8℃から1月の23.3℃と、年間を通してほとんど気温の差が無い国といえます。しかしながら2015年12月と2016年1月の気温は、2ヶ月連続で過去最高となったとのことです。今年1月の最高気温の平均が31.6℃と、ほとんど4月と同じ、最低気温は26.0℃と年間最高の5月より暑かったことになります!。エルニーニョの影響大ですね。

 朝のラジオではその日の天気予報が流れるのですが、赴任してから五か月間、毎日代わり映えのしない予報が繰り返されます。平日の勤務中はオフィスビルの空調の中にいるため、外の気温が1℃や2℃違っても影響はなく、年間を通して毎日同じ天気が繰り返されると思うと、四季のある日本がうらやましくもあり、こちらの生活が楽でもあり複雑な気分です。ちなみにシンガポールの人は四季に憧れがあるようで、毎年多くの観光客が四季を体感しに日本へ旅行に行くそうです。春の梅や桜、夏の北海道、秋の紅葉に冬のスキーは、シンガポール若者の人気No.1だそうです。

2015年12月に真夏の日差しのEast Coast公園から市街地方面を望む

 日本とちょっと違う高層ビル群

 シンガポールで一番有名な観光名所はマーライオンですが、マーライオンのいるマリナベイエリアは、この国の経済の中心地、東京の大手町のようなところです。いくつもの高層ビルが立ち並ぶさまは、まさに壮観です。地震が起きたらどうなってしまうのだろうと、地震国から来た我々は危惧してしまいますが、その心配は無用のようです。

 シンガポールは、ヨーロッパからロシア、中国を乗せたユーラシアプレートに乗っています。日本の西半分と同じプレートです。前出のスマトラ島の西側でオーストラリアからのプレートとぶつかり、その境界ではたびたび大地震が発生しています。東側ははるか離れたフィリピンの東側で、日本でも有名なフィリピン海プレートと接しています。ヘイズではその原因となるスマトラ島ですが、地震による津波の被害には防波堤となってくれるため、シンガポールに地震はなく、地震による被害もないといわれています。そのためかこの国の建造物は日本人には想像のつかないような奇抜なデザインが多くみられます。マリナベイエリアの鉛筆のような細長いビルがにょきにょきと立ち、ベイをはさんだ対岸には屋上に船を載せたような奇抜なデザインのホテルを見上げるここの夜景は、旅行者に限らず一見の価値がある人気の場所です。シンガポールを訪れる機会があれば、耐震性よりも芸術性を追求したようなビルやアパートを眺めてみるのも面白いと思います。
夜のシティー中心部

夜のシティー中心部(手前がマーライオン)
チャンギ空港内部の庭園。高い天井を支える支柱はありません

超高層ビルからシンガポール海峡を望む
中央のホテルマリナベイサンズ屋上には、船の形のプールや庭園が乗っています

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