1/04/2016

Fineシティーシンガポール

 シンガポールの生活通信も最終回を迎えることになりました。[第一回]では、気候の安定した自然災害の無い国の環境取り組み、[第二回]でダイバーシティー(人種とカルチャーの混在)の進んだ国、[第三回]で交通事情から、将来を見越した政策の国としてご紹介してきました。非常に個人的な見解ではありますが、私はこの国が大好きです。引き続き[最終回]では、Fine City Singaporeと題してシンガポールのすばらしさをご紹介いたします。

 上記のようにここシンガポールは、①年間を通じて温暖で過ごしやすく、②地震の心配が無いため高層ビルが所狭しと立ち上がり、それぞれが凝ったデザインの個性的なビルが楽しめ、③中国、マレーシア、インド、その他各国の混合カルチャーにより、いろいろな言語、食文化、宗教観を体感でき、④それらが個々に尊重され容認する文化が確立しており、⑤経済を中心に非常に活気のある文化都市です。ひとことで言うならずばり、Fine Cityです。

 シンガポール人は往々にして、自虐的な意味でFine Cityと呼んでいます。そうです『罰金大国』という意味です。どこの国にも法律が制定され、法律を犯したときには罰を受けるのは同じなのですが、シンガポールならではの法律と罰があり、仕事で生活する我々居住者にとっても、旅行でシンガポールを訪れる旅行者にとっても、知っておいて損は無いいくつかのルールと罰則をご紹介します。

 シンガポールにはチューインガムを持ち込めず、道路につばを吐いたら鞭打ちの刑になる

 ステレオタイプの文章ではありますが、大方合っています。アジアの他の地域を悪く言うわけではありませんが、シンガポールがアジアの人口密集都市であるにもかかわらず、道路には埃風に舞う紙くずも食べ物のカスも見当たらず清潔感があるのは、Fine Cityのおかげだと思っています。
「安全で清潔な国を作ろう」という政治のポリシーが、「将来に引き継ぐ環境を作ろう」という自動車規制のポリシーに引き継がれているのではないかと思います。二十数年前に二週間ほど、出張でシンガポールを訪れたことがあります。そのときの印象は決して今のような清潔感は無かったように記憶しています。清潔な国づくりのために見出しのような一風変わった法律を作り、民族同士がお互いを気遣い、気持ちよく過ごせる環境を整えてきたのだと思います。

 何かで読んだ記事ですが、エレベータの押しボタンにガムをつける人が多いため、ガムを禁止したのだとか。エレベータといえば、エレベータ内で放尿するとS$1,000(約8万円)の罰金という法律もあります。なぜエレベータ内と限定しているのかはわかりませんが、階段と違い囲まれた空間だからでしょうか?もちろん公共の場所での放尿を含み、廃液の投棄、家具等の放置(放棄)、ごみの放置は同様にS$1,000の罰金刑です。家具の場合はS$5,000のようです。これらは特に不思議な気はしないのですが、何で?と思うものに、公共の場所で洗濯したり洗濯物を干したりしてはいけないそうです。食品干しも禁止だそうです。他人の下着がたなびく公園というのも、確かに気が休まるものではないですね。同様にクサヤの匂い漂う広場も、いただけませんね。罰金額は初犯の場合で、2回目はS$2,000、3回目以降はS$5,000以下と増額されてゆきます。

 鞭打刑についてですが、何年も前のニュースで、公共の壁に卑猥な落書きをしたアメリカ人少年に対して鞭打ち刑が言い渡され、残酷すぎるとのアメリカからの非難を浴び、鞭打ちの回数が減刑されたことが記憶にあります。鞭打ちはこの国に残る躾文化のようで、実は学校にも家庭にも鞭があるそうで、雑貨屋さんでも売っています。学校で問題を起こした生徒は、教育委員会のような場で議論され、鞭打ちが言い渡されるそうです。そして校長先生が問題の生徒の手のひらか臀部に、鞭を当てるそうです。家庭では家族会議でも開くのでしょうか。ただし女性には鞭打ち刑はないそうです。代わりに何をするのかな、と初老男子はいろいろ想像してしまいます。

 鞭打ち以外の刑罰として、矯正労働があります。私は○○の罪を犯しましたというようなゼッケンを付けて、道路のごみ拾いをしたり草刈をしたりするようです。何回にも分けて実施しなければならず、これに従わないと懲役となるそうです。市中引廻しの刑ですね。

 蚊の発生する環境を放置すると

 ここまでは、Environmental Public Health Act(公共健康環境条例?)の条項ですが、他にもユニークなものがあります。近年日本でも発生して問題となったデング熱や、妊婦を脅かしたジカ熱は、蚊に刺されることで感染するとされています。日本脳炎やマラリアも、蚊が媒介する感染症です。シンガポールは熱帯雨林ですので、これらの感染症にも敏感に反応しており、とにかく蚊を発生させないことに重点を置いているようです。小国で人口密度も高いのですが、森や湖(貯水湖)も多く残っていますので、蚊の駆除は頻繁に行われているようです。

 ベランダに鉢植えを飾っていたら、環境省の見回り官が突然訪問してきて罰金(現在はS$200)を言い渡されることがあるそうです。鉢の下に受け皿があり、そこに水がたまっていたことが、蚊の発生を助長しているためです。我がアパートには鉢植えは置いてありませんが、めったに使わないトイレがあり、そこには当然水がたまっています。「たまに使っています」と主張すれば大丈夫でしょうか。
トイレといえばもうひとつユニークな違反行為があります。公共のトイレで使用後に水を流さないとS$1,000の罰金となります。だれが、どこで見張っているのでしょうか?道路工事などで穴を掘った後、雨水が七日間以上とどまる状態を放置した場合も、蚊の発生助長罪になります。三ヶ月以下の懲役刑です。

 いずれの法律も、安全で清潔で周りの人に迷惑をかけないため、という目的は満たしています。シンガポールの公共交通機関であるMRT(都市部は地下鉄)は、飲食が禁止されており、違反者にはS$500の罰金です。電車内で女子高生がフライドポテトを食べるのは、だめです。経験上結構匂いを振りまきますしね。さらに注意したいのはフルーツの大様“ドリアン”です。路上で売られているドリアンを購入し、MRT、バス、タクシーに乗車することはできません。ましてや切り身で売っているドリアンは、鞭打ち間違い無しですので、ご自分の車か徒歩で家まで持ち帰ってください、お願いします。ちなみにMRTや路線バスに規定料金を払わずに乗車すると、S$50の罰金がかかりますので、乗車料金はきちんと支払い、車内で飲食はせず、ドリアンは持ち込まずと覚えておきましょう。

MRT内の禁止行為 一番右がドリアンの絵です

 公共の場所に限らず、他人への迷惑行為は違反であると思って行動すれば、問題は無いと思いますが、初老男子がついついやってしまいそうな違法行為があります。そう、泥酔です。自分自身で自分の世話をできない状態を、泥酔状態と判断するようです。思い当たりますね。まっすぐ歩きたいのによろよろ、ふらふら。終いには道路に座り込んで居眠り。確かに他人に迷惑をかけています。S$2,000の罰金を払うより、$200で十回飲みに行くほうが、気持ちがいいと思います。酔った勢いで(酔ってなくても)わいせつ行為に及んではいけませんし、売春行為も禁止です。ご自分自身を露出することもだめです。自分の家の中であっても、外から見える場所で裸になることもだめだそうで、裸族のかたはご注意を。しかし入浴の権利は守られており、浴場は覗いてはいけない規則のため、家中を浴場にしてしまえば見たほうが悪いとなるため、裸族のままでも大丈夫?

 話が脱線してしまいましたが、細かなことまで罰金制にすることで、この国が安全に生活できるようになり、街が清潔になりその状態が保たれていると思えば、これから生活する我々としてはありがたい限りです。別枠でユニークな規則を、あと三つご紹介します。「選挙に投票しないと罰金」と「野生のサルに餌をあげると罰金」さらに「窓を落下(!)させると罰金」です。高層ビルの多いシンガポールで、窓が落下したら大事ですが、この10年で303人が罰金処分を受けているそうです。これからは上を向いて歩こう!麻薬に関しては、死刑もありますので絶対に手を出さないでください。

 業務または旅行でシンガポールに来られる方は、周りの人を不愉快にさせないよう、大人の行動をとられますようお願いいたします。そしてこの国が安全で清潔であり続けることを切に願って、さらに将来にわたり、元気良く発展を続ける活気のある国であり続けることを願って、大好きなシンガポールからの通信を締めさせていただきます。一年間ありがとうございました。

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