9/01/2025

2025/9月のハイク(田代山湿原)

2025/9/01 (Mon)

9月に入っても36℃予報のため、栃木・福島県境の田代山へ
栃木側の県道350号栗山舘岩線は、法面(人工的な斜面)崩壊により全面通行止で、解除時期は未定のため、ぐるりと福島県側の湯ノ花温泉から猿倉登山口へ
湯ノ花温泉から猿倉登山口までは、約10kmの未舗装路
BMWには可哀想だが、頑張ってもらうしかない
登山口の少し手前にトイレがあり、広めの駐車場があるため、ここで昼食
写っている車は、駐車場の草刈りをしていた人のもの
ウバユリが立派な実を付けている
ゲンノショウコ(現の証拠)にも、出迎えられる
ガクアジサイか、ヤマアジサイか
直進は栃木側の栗山舘岩線だが、修復は始まっているのか、このまま廃線の道をたどるのか
2007/8月に、尾瀬国立公園に編入されたという
目指すは、関東と東北を分ける帝釈山脈の一座で、山頂に高層湿原の広がる田代山
花の百名山(キンコウカ)、東北百名山、会津百名山、新うつくしま百名山、そして栃木百名山のタイトルを持つ
さっそくオオウバユリもあった
湯ノ岐川を渡ると、シシウド属のアマニュウだろうか?
標高1,390mの猿倉登山口から、登山道へ入る
今年6月に、日光高山で出会った、ズダヤクシュ(喘息薬種)

一定の勾配で、登りが続く


葉の形から、キツネノボタンだろう
トウバナの仲間だろうが、山地の木陰に咲く白花なので、イヌトウバナか、その変異種の、ミヤマトウバナだろう
広葉樹林の中の、整備の往き届いた登山道を、ひたすら登る

数日前に大雨が降ったそうで、いたるところでキノコに出会う
4枚輪生の葉は、ツクバネソウ(衝羽根草)で、実になる前の花後
オクモミジハグマ(奥紅葉白熊)だろう
シラカンバにも見えるが、たぶんダケカンバ
拡大してみると葉に暗点(黒点)があるので、オトギリソウ(弟切草)

アカヌマベニタケ属だろう
ミズキの葉は互生だが、対生に見えるので、
クマノミズキ(熊野水木、Swida macrophylla、ミズキ科ミズキ属の落葉高木)か?
その奥には赤い実の、ガマズミ(莢蒾)
ツルタケ (鶴茸、Amanita vaginata、ハラタケ目テングタケ科テングタケ属の中型のキノコ)か?

数本の木の根が絡まったまま、むき出しになっている
利尻・礼文で出逢ったゴゼンタチバナ(御前橘)の実

花も一輪だけ残っていた
このあたりでは、一番数が多い植物のように思う

部分的に急登もあるが、木製の階段がきちんと整備されており、歩きやすい
ほぼ一直線に、高度を上げる
コウモリソウ属だが、横広な葉から、
カニコウモリ(蟹蝙蝠、Parasenecio adenostyloides、キク科コウモリソウ属の多年草)
カニの甲羅に似てるよね
ツルリンドウを見つけた
アキノキリンソウ(秋の麒麟草)
このあたりから、アキノキリンソウが続く
ハハコグサは黄色い花だが、ヤマハハコ(山母子)は白い花びら
これは不思議、サンゴ状の菌類だろうか?
樹林帯を抜けて、周りの景色が広がった
中央の黒い山は、今登っている帝釈山地の東南東に位置する、高原山と思われる

コバイケイソウ(小梅蕙草、Veratrum stamineum、シュロソウ科(メランチウム科、ユリ科)シュロソウ属の多年草)の実
花びらが尖がってるのがバイケイソウで、丸みがあり梅の花のようなのがコバイケイソウ
または、雄しべが短く、花被片の内側にあるのがバイケイソウ、雄しべが長く花被片から飛び出しているのがコバイケイソウだというが、今となってはわからない
個人的には大きく直線的に伸びるバイケイソウ、背は1m以下で、花穂を横にも広げるコバイケイソウなのだが、尾瀬のガイドブックではコバイケイソウを載せているので、そちらに倣う

高原山から右側、中央奥に雲に隠れて見えるのは、日光連山の女峰山

視界が広がり、小田代(こだじろ)湿原に出た
淡水によって湿った草原を湿原といい、植物遺体が泥炭となるため養分の循環が発生せず、周囲から流入する水が届かない高さまで泥炭表面が発達した湿原を、高層湿原という
この定義でいえば、小田代湿原には田代山頂からの流入水がありそうだから、高層湿原とは言えないかもしれない
オヤマリンドウに似るが、茎の先端部以外にも花を付けるのは、山地の湿地帯に生えるホソバエゾリンドウ(Gentiana triflora)の変種、エゾリンドウ(蝦夷竜胆)
イワショウブ(岩菖蒲、ムシトリゼキショウ、Triantha japonica、チシマゼキショウ科イワショウブ属の多年草)があちらこちらに

花の百名山が、田代山の代表花にあげた、キンコウカ(金光花)


イワカガミの実(赤色)は、去年安達太良山で見つけた
黄色はキンコウカ
白花のヒメイワカガミには、赤薙山でたくさん出逢ったが、イワカガミの花には出逢えていない
キンコウカの群落

小田代湿原の先は、急な登りが続く
ハリブキ(針蕗、Oplopanax japonicus、ウコギ科ハリブキ属の落葉低木、雌雄異株)の実
熟すと、立派な赤い実になるようだが、まだ小粒だ
クロヅル(黒蔓、昆明山海棠、Tripterygium regelii、ニシキギ科クロヅル属の落葉つる性樹木)
ゴゼンタチバナが、紅葉している
東側の山々を眺めながら、最後の登り
標高も上がり、高原山がしっかり見えてきた
女峰山はいぜん雲の中
キンコウカ、エゾリンドウに励まされ、もうひと登り

クロヅルも、こうなると樹木だとわかる
ガクアイサイでいいと思う




オヤマボクチ(雄山火口、Synurus pungens、キク科ヤマボクチ属の多年草)
ヤマゴボウとも呼ばれる山野草で、福島県では米粉や餅米と混ぜてついた餅を、寒さで凍らせ乾燥させる、地域特産品の『凍み餅』の材料となるらしい


赤い実は、ガマズミ
さっきのは、葉に暗点(黒点)があるオトギリソウでしたが、これは拡大すると葉に明点(白点)があるので、サワオトギリ(沢弟切)

ツル性なのが良くわかる、ツルリンドウ(蔓竜胆)
陽が出ていないせいか、一輪も開いていない
樹木がなくなり、急に台地が現れる
田代山の山頂に広がる、田代山湿原だ
湿原内には木道が敷かれ、右側からぐるりと周る、一方通行

イワショウブの実
花は前出のように白いが、赤い実も花のような見た目だ

モウセンゴケ(毛氈苔、マルバモウセンゴケ、Drosera rotundifolia L.、モウセンゴケ科モウセンゴケ属の多年草、食虫植物)
ミズゴケ類の育つような湿地に生育するが、種で繁殖する背の低い草で、茎はごく短く、地面から葉を放射状に出し、白い5枚の花弁の花も咲かせるらしい
葉にははっきりした葉柄があり、葉身はほぼ円形で、一面に長い毛があり、その先端から甘い香りのする粘液を出す
これに釣られてやってきた虫がくっつくと、粘毛と葉がそれを包むように曲がる
弘法沼は、湿原内で一番大きな池塘(池溏、ちとう、湿原の泥炭層にできる池沼)だ
これは、高山植物の代表格の、チングルマ(珍車、稚児車)だ
キンコウカの実

木賊温泉からの登山道と合流し、田代山山頂と書かれているが、標高は1,926mとあり、栃木百名山第27座の標高1,971mより低い場所にある
正面に会津駒ヶ岳が見える
陽射しも無く、方向感覚が鈍るが、会津駒ヶ岳は北西にあたる
ワタスゲ(綿萓)の残骸と、
チングルマの老後
田代山湿原は、南西から北東に向け長い楕円形をしており、その直径は長い方が約800m、短い方が約350m、面積は約20万m2、標高は約1,920~1,970m
コバイケイソウの頭にとまる、アキアカネ
これは獣の毛でしょう
正面の林が、もっとも標高が高い気がする
南会津の山々を背景に
イワカガミの実
チングルマの綿毛
前出のイワショウブの実が成長すると、3つの苞ができるようだ
イワショウブを並べてみた
キンコウカとチングルマ
山開きの直後は、さぞかし見事な花畑だろうが、人も多いのだろうな
湿原全体の紅葉も、見事だそうだ
湿原の周遊は左へ、隣の帝釈山までは、1時間ほどの行程だが、次回のお楽しみとする
帝釈山方面に休憩所があるので、100mだけ直進
ゴゼンタチバナは、湿地の中は好まないようで、周囲の林にかたまって咲いていた
弘法大師堂は、避難小屋を兼ねている
どうやらこの場所が田代山湿原の最高地、つまり田代山の山頂のようだ
江戸時代、山頂に田代神社がまつられ、1912年、真言宗の高僧と地元の神主と剛力で、弘法太師の像を山頂にまつり、弘法さまと田代大明神は湿原とふもとの村を見守る位置に安置されたという
山頂にもトイレが完備されており、利用はしなかったが頭が下がる
ホソバヒナウスユキソウには逢えなかったが、ヤマハハコはたくさん見れた
シロバナウツボグサ(白花靫草、Prunella vulgaris Linn. var. lilacina、シソ科ウツボグサ属の多年草、ウツボグサの白花種)

休憩を終えて再び湿原を歩くと、地表が白くなっている場所があり、よく見るとコケ類かと思いきや、菌類が藻類(主にシアノバクテリアあるいは緑藻)を共生させることで自活できるようになった生物、これを地衣類(ちいるい)といい、コケ類とは全く異なる生物らしい
菌界-子嚢菌門-チャワンタケ亜門-チャシブゴケ菌綱-チャシブゴケ目-ハナゴケ科-ハナゴケ属の樹枝状地衣で、ミヤマハナゴケ、ハナゴケ、コアカミゴケのいずれかであろう
コアカミゴケは、先端に赤いもの(子器)を付けるようなので、これは消去
雨が降ると水を吸収してしなやかとなって、生き物らしくなり、ちゃんと光合成をして、1年で3-11mm成長し、するらしい
英語では、reindeer moss, deer moss, caribou mossと呼ばれるが、Moss(蘚類)ではないものの、トナカイの重要な食糧となり、エスキモーはそのまま食べたり、ベリー、魚卵、またはラードと混ぜて食べたり、腎臓結石の伝統的な民間治療薬や下痢の治療薬として、茹でて食べたり、汁を飲んだりするが、酸が含まれているため、加熱が不十分だと胃痛を起こすことがあるだとか
ハイマツの枯れ枝が、幻想的

小天狗が住んでいたという鳥居岩は、このあたりか
ホロムイソウ(幌向草、Scheuchzeria palustris、ホロムイソウ科ホロムイソウ属の多年草、一属一種)の実
亜寒帯に分布し、淡水の湿地に生育するらしいが、変なやつ
ふたたび、アキノキリンソウの大物
田代山湿原をぐるりと回ったので、来た道を下山する
ミズヒキの実かな
雌しべが弓状に象の鼻のように曲がるミヤマホツツジではなく、長くほぼまっすぐな雌しべを持つのは、ホツツジ
往きと帰りでは、見える景色や見つける植物も異なるのだが、今回はあまり収穫無し
往きに見かけて、変わったシダだなあと無視したが、帰路に写真だけ取っておき、家で調べたらこれは、
オサバグサ(筬葉草、Pteridophyllum racemosum、ケシ科(ケマンソウ科)ケマンソウ亜科オサバグサ属の多年草、一属一種、日本特産)
6~8月が花期で、白い4弁の花を下向きに咲かすらしく、尾瀬では、田代帝釈山系だけに生息するという

日当たりの良い草地に生育するカラマツソウの葉は、パクチーのようだが、湿り気のある林縁・林床などに生育する、葉のしっかりとした、ミヤマカラマツ(深山唐松)
湯ノ岐川の橋に差し掛かると、往きに見逃した、
ソバナ(岨菜、蕎麦菜、杣菜、Adenophora remotiflora、キキョウ科ツリガネニンジン属の多年草)を発見
やはり、帰路にも収穫があった




1,800mの平坦が小田代(こだじろ)湿原
往きに見た植物は素通りする為もあるが、下山は早い


駐車場からダート林道を走るが、途中目に付いた植物は、フジバカマ(藤袴)
ハンゴンソウ(反魂草)
ツリフネソウ(釣船草、吊舟草)

赤いミズヒキ(水引)と、黄色いキンミズヒキ(金水引)

ヌスビトハギの仲間だろうが、葉脈が縁まで届かないのは、オオバヌスビトハギか、アレチヌスビトハギ

湯ノ花温泉に入ろうと思ったが、「湯端の湯」の周りに人気が無く、チケットが買えない
中には、部落民用の混浴と、旅人用の男女別浴槽があったが、石鹸シャンプー類も無く、衛生感が強い連れは、入りたくないらしい
「湯端の湯」脇に温泉神社があったが、麓から拝んでおしまい
温泉気分になってしまったので、通りすがりに見ていた、国道沿いの「夢の湯」へ
15分の入浴で、かたまっていた赤血球がバラバラになり、サラサラになるという
どうも、理屈を並べるのが好きなようだ
平成元年に、温泉が懇々と湧き出している初夢を見たので、850mも掘り進めて当たった温泉だという
お湯は熱めだが、登山後の足モミは気持ちがいい
アメニティーも最小だが、まあよい
車のガス残量が少なく家まで帰れないので、西那須野の町へ出て千円分だけ給油
夕方の渋滞を避けるべく、那須塩原市の和厨房「遊膳」で夕食
若者が頑張って立ち上げたレストランのようで、ネタは悪くないのだろうが、先日の大洗が美味すぎて、残念な評価だ

デザートをいただき、帰宅